貨物や旅客などの運送事業者は、所有する社用車の台数に応じて、適切に運行管理者を配置しなければいけません。
そこで今回は、運行管理者の概要や、運行管理者になるための方法、運行管理者が知っておくべきことなどについて解説します。
運行管理者を配置する事業主や運行管理者になりたい人などにとって、必要な情報をまとめているため、ぜひ参考にしてください。
運行管理者とは、貨物や旅客などの運送事業者にて配置することが義務付けられている人のことです。
運行管理者は、運転手が飲酒していないかどうかや、疲労や健康状態が問題ないか、などを把握および管理することで、安全な運行を実現する役割を担っています。
ときには、「Lark 自動点呼」のような、国土交通省認定の業務後自動点呼認定機器(JG24-009)などを使って、スムーズかつ効率的に安全な運行を遂行する必要があります。
配置する必要がある人数
基本的に、配置する必要がある運行管理者の人数は、保有している社用車の台数に応じて異なります。
運送事業者は、主に「貨物」と「旅客」の2つに分けられるのですが、貨物の場合は社用車が29台以下の営業所なら、運行管理者を1人配置しなければいけません。
そして、社用車が30台追加されるごとに運行管理者の配置人数も1人ずつ増やす必要があります。
ただし、営業所1ヵ所に対して、1人以上の運行管理者を配置することが義務付けられており、仮に、2ヶ所の営業所があり、保有する社用車が15台の場合でも、それぞれ1名ずつ配置する必要があります。
さらに、運送事業者内で複数の運行管理者がいる場合は、その中から責任者を決めなければいけません。
対して、旅客の場合は乗り合いバスの場合、保有台数1台から39台以下の営業所なら、運行管理者を1人配置しなければいけません。そして、以降40台が追加されるごとに運行管理者の配置人数も1人ずつ増やす必要があります。
また、タクシーの場合は、保有台数が5~39台以下の営業所なら、運行管理者が1人必要です。そして、以降40台ごとに運行管理者を1人ずつ追加します。
そのほか、貸切バスや霊柩車、車いすでの乗降装置および車いす固定設備など特殊な装備のある自動車などの場合も、必要な運行管理者の人数はあらかじめ定められています。
必要な届け出
運行管理者を選任したら、国土交通省に届け出る必要があります。手続きは、地方運輸局の支局で、以下2つの書類を提出します。
運行管理者選任・解任届け出書
運行管理者資格者証の写し
貨物運送事業者の場合は選任から1週間以内に、旅客運送事業者の場合は選任から15日以内に届け出をおこなわなければいけません。
主な業務
運行管理者の主な業務は、安全な運行のための管理です。
たとえば、点呼の際、アルコール検知器で飲酒していないかチェックしたり、運転手の疲労や健康状態に問題がないか確認したりします。
そのほか、過労運転とならないようなシフト作成や、運転手が安全運転への理解を深めるための研修の実施、運転手が休憩を取るための施設の管理など、業務範囲は多岐にわたります。
物流2024年問題からみる運行管理者の必要性
2024年から、働き方改革法案により運転手の労働時間に上限が課されるようになりました。それにより、さらなる効率的な業務運行が必要とされます。
ときには、業務時間内に作業を終わらせようと、気持ちが焦る運転手が出てくるかもしれませんが、兎にも角にも大切なのは、安全な運行であると教育し直す必要があるでしょう。
運行管理者になるための2つの方法
運行管理者になるための方法は2つあります。
国家試験に合格する
実務経験と講習を受ける
それぞれについて詳しく解説します。
①国家試験に合格する
運行管理者になるための方法のひとつは、国家試験である「運行管理者試験」に合格する方法です。運行管理者試験に合格することで、「運行管理者資格者証」の交付を受けることができます。
ただし、試験を受けるためには、1年以上の実務経験を積んでいること、または、実務経験と同等の講習を修了していることといった条件を満たす必要があります。
運行管理者試験は、貨物と旅客の2つに分かれており、いずれの試験も選択式で、合計30問出題。総得点が満点の60%以上、つまり、30問中18問以上の正解が必要です。
過去5年間の平均合格率は、貨物が33.5%で、旅客が35.9%です。
②実務経験と講習を受ける
運行管理者になるためのもうひとつの方法は、実務経験と講習受講です。
5年以上の実務経験があり、かつ、基礎講習や一般講習を修了していると、一定の条件を満たしていると判断され、運行管理者の資格を取得できます。
国家試験「運行管理者試験」とは
続いて、国家試験である運行管理者試験についてさらに詳しく解説します。運行管理者試験は、貨物と旅客に2つに分けられますが、出題される5分野のうち、以下4分野は共通したものです。
道路運送車両法関係
道路交通法関係
労働基準法関係
その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識および能力
【貨物】運行管理者試験の概要
貨物の場合、「貨物自動車運送事業法関係」が出題されます。
令和5年第2回運行管理者試験の受験者は、2万2,493人。そのうち、合格者は7,701人で、合格率は34.2%でした。
【旅客】運行管理試験の概要
旅客の場合、「道路運送法関係」が出題されます。
令和5年第2回運行管理者試験の受験者は、5,434人。そのうち、合格者は1,984人で、合格率は36.5%でした。
ライドシェアのデメリット
続いて、運行管理者が知っておくべきことについて解説します。ポイントは以下の3つです。
原則として運転手にはなれない
定期的に講習を受ける必要がある
運行管理補助者にサポートしてもらえる
それぞれについて深堀します。
原則として運転手にはなれない
運行管理者は、原則として運転手としてシフトに入ることはできません。ただし、ほかの運行管理者や運行管理者補助者に点呼してもらう場合は、運転手として勤務することもできます。
しかし、現実的には、運転手の点呼や運行管理業務などをおこなうので忙しいため、運行管理者が運転手を兼務することはめったにありません。
とくに、事業所あたり1人の運行管理者しかいないときは、気をつけましょう。
定期的に講習を受ける必要がある
運行管理者は、資格を取得した後、定期的に講習を受ける必要があります。その講習内容は以下の通りです。
一般講習
基礎講習
特別講習(重大事項または法令違反により処分を受けた場合のみ)
基本的に受講するのは、一般講習と基礎講習のみ。一般講習は、運行管理者に選任された年度内(4月~翌年3月)に受けます。そして、運行管理者であり続けるためには、原則として2年ごとに一般講習または基礎講習のいずれかを受講する必要があります。
運行管理補助者にサポートしてもらえる
運行管理者は、事業所あたり1人しかいない場合、運行管理補助者を選任することができます。
運行管理者補助者は、主に運転手への点呼をおこないます。ただし、運行管理補助者が点呼をおこなえるのは、点呼実施回数において3分の2までとされています。
また、事業所内で違反やトラブルが発生した場合は、速やかに運行管理者に報告する義務があります。
考えられる違反やトラブルは、以下の通りです。
運転手が飲酒している
運転手が疲労や睡眠不足などの理由で安全運転ができない
無免許運転または大型自動車無資格運転
過積載運行
最高速度違反
仮に、運行管理者が休んでいる場合でも、電話で連絡を入れるといった行動が必要です。
たとえば、運行管理補助者は、運行管理者が体調不良で休むときや、業務が多忙で一時的に点呼を代行してほしいときなどに活躍します。
なお、運行管理補助者になるためには、「運行管理者証を取得している」または「国土交通大臣が認定する基礎講習の修了者である」という条件を満たす必要があります。
運行管理補助者の場合、業種によっては「運行・整備管理者選任等届出書」を提出する必要があります。貨物運送事業者は基本的に手続きする必要がありませんが、貸切バスは届け出を提出する必要があるため、気をつけましょう。
運行管理補助者は、あくまでも運行管理者をサポートするという位置づけであると理解するとよいでしょう。
物流2024年問題に対応するためには運行管理のIT化が必須
最後に、物流2024年問題や物流DXについて解説します。
物流2024年問題とは
物流2024年問題とは、2024年4月からトラック運転手の時間外労働は960時間という上限制限を加えることで、輸送力が落ち、今まで通りモノが運べなくなるまたは届くのが遅れてしまうという問題が発生する可能性が懸念されている問題のことです。
ネットショッピングが私達の生活に浸透しており、物流の輸送力は不足しつつあるとされています。政府は、輸送力が2024年には14.2%、さらに2030年には34.1%不足する可能性があると試算しており、心配の声が寄せられています。
トラック事業者にとっては、荷主や一般消費者のニーズに応えられなくなり、今まで通りの輸送ができなくなったり、運転手の増員をしたいが人が集まらなかったりする事態に陥るかもしれません。
そのため、物流2024年問題を少しでも緩和させるために実施したいことが以下の3つ。
荷待ち時間および待機時間を短縮する
トラック運転手の作業内容を削減する
長距離輸送は中1日を空けて効率的な輸送をする
やはりポイントは「効率的」です。運行管理ひとつ取ってみても、待ち時間を発生させずスムーズに遂行する必要があります。
それを実現するために注目されているのが、運行管理ITツールです。たとえば、「Lark 自動点呼」なら、自動点呼や遠隔点呼、ライドシェア点呼、対面点呼など、あらゆるニーズに応え、点呼をスマートフォンでスムーズに実現します。
さらに、点呼の結果は自動で記録され、クラウドで一元管理できます。もう紙での入力は必要なく、多くの書類を保管する必要はありません。
便利なツールを導入し、点呼にかかわるすべての人の負担を軽減させましょう。
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
近年、注目を集めているのが、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)です。
物流DXでは、輸送や保管、荷物の上げ下ろし、流通加工など、さまざまな事業の各プロセスにおいてAIなどのデジタル技術を活用する取り組みが期待されています。
たとえば、倉庫の状況を予測できるITツールを導入して、現状よりも迅速に輸送できる体制を整えるといったものが挙げられます。
物流業界は、ネットショッピングの普及による小口配送の急増や、物流2024年問題、人手不足などに悩まされています。
そのため、ITツールを活用することによって、業務を効率化させ、負担を軽減させる取り組みが必要だとされています。