「点呼」という言葉をご存知でしょうか?辞書を引くと、「一人一人の名を呼んで、全員いるかどうかを確かめること」とあるが、運送業、建設業、警備業など、点呼が行われている業種は実に多岐にわたる。
特に、運送業においては、トラック運転手やタクシー運転手などを対象とした点呼が法令により義務化されている。2024年は「日本版ライドシェア」の一部解禁・普及にともない、運送業以外の一般の方でも、この言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
法令遵守や事故防止を促進するために不可欠な点呼。しかし、その実施方法や注意点、効率的に実施するためにはどうしたらよいかなど、悩む方もいるかもしれません。
そこで今回は、運送業における点呼の正しい流れ、点呼の方法やそれぞれのメリット・デメリット、点呼業務を適切に行わなかった場合の罰則などを解説します。
国土交通省が認定している点呼機器についてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
運送業における点呼は、運転手が運行を開始する前、途中、または終了後に行う確認作業を指します。具体的には、アルコール有無の確認、運転者の体調判断、車両の状態チェック、運行計画の確認や乗務中の出来事の報告などを行います。
点呼を実施しないと、以下などが発生する恐れがあります。
酒気帯び運転や危険ドラッグ使用運転
運転手の健康が起因となった交通事故
運転手とのコミュニケーションが希薄になって重要な情報が共有されない
点呼の実施者
点呼の実施者は、国家資格である「運行管理者」の有資格者または事業者が選任した運行管理補助者です。
基本的には、運行管理者が点呼をおこないますが、月の3分の2までなら運行管理補助者が代わって実施することも認められています。
点呼の流れ
法令の規定により、点呼は運転手の乗務前と乗務後に2回実施する必要がある。そして、対面での点呼ができない場合は、中間点呼を行わなければなりません。
そして、点呼時の確認事項は決まっており、その記録を紙またはデジタルで保管する必要があります。確認事項は、点呼の種類によって異なるため、気を付けてください。確認事項は変更されることもあるため、常に最新の情報を得るようにしましょう。下表は、2024年10月時点の情報です。
それぞれについて詳しく解説します。
乗務前点呼
乗務前点呼とは、運転手が当日の業務をおこなうために乗車前におこなう点呼のこと。
原則的には、対面で行う必要がありますが、長距離運行で運転手が営業所から遠く離れた場所にいる場合は他の点呼方法も認められています。
また、国土交通省は2024年5月に、指定の機器(ロボット)を使用した「乗務前自動点呼」の先行実施を2025年3月31日までに行うことを発表(発表資料)。これまで運行管理者が立ち会う必要があった乗務前点呼は、無人化になる可能性が高まっている。
乗務前点呼の実施は、乗車する5~10分前あたりが適しているでしょう。
なぜなら、たとえば乗車する30分以上前に実施すると、点呼実施から乗車開始までの間に運転者の健康状態が変わったり、場合によっては飲酒したりするというリスクも潜んでいるためです。
こういった乗務前点呼のタイミングについては、あらかじめ運行管理規定で定めておくことをおすすめします。
乗務後点呼
乗務後点呼とは、運行終了後に実施する点呼のこと。トラックやタクシーなどを車庫へ駐車した後、速やかに乗務後点呼をおこなう必要があります。基本的には乗車後5分以内におこなうのが理想的です。
乗務後点呼の場合、酒気帯びの有無を確認することは特に重要ですが、運行管理者の負担を軽減するために、2023年4月からロボット(機器)が運行管理者の代わりに「乗務後自動点呼」を実施できるようになりました。
中間点呼
中古点呼とは、2泊3日以上の運行をする場合に実施する点呼のことです。一般的に運転手は遠方にいるため、電話点呼やIT点呼、遠隔点呼などの非対面点呼方法を実施します。
中間点呼は、乗車中の少なくとも1回おこなう必要があるため、2泊3日以上運行する場合は、乗車前と乗車後だけおこなえばよいということではないため気を付けてください。
なお、1泊2日の運行の場合は、乗車前または乗車後のいずれかは点呼をおこなうことになるため、中間点呼は不要です。
点呼の方法やそのメリット・デメリット
続いて、点呼の方法について解説します。主に5種類あります。
対面点呼
電話点呼
IT点呼
遠隔点呼
自動点呼
それぞれについて詳しく紹介します。
対面点呼
対面点呼とは、運転者が営業所または車庫の定められた場所で運行管理者と直接対面して点呼を行う形です。やむを得ない事情は除くが、原則的に対面点呼をおこなう必要があるとされています。
対面点呼のメリットやデメリットです。
メリット
運行管理者が運転手の表情や態度を観察でき、しっかりとした確認ができる。
車両の外観や装備を直接確認でき、質問や指示を行うことが可能。
デメリット
運行管理者が不足している場合、点呼に時間がかかりすぎ、運行開始が遅れることがある。
移動に時間やコストがかかる。
電話点呼
どうしても運転手が遠隔地などの離れた場所にいる必要があり、物理的な事情で運行管理者と対面点呼できない場合、携帯電話を使って点呼をする方法もあります。
ただし、電話や業務無線など、運転手と運行管理者が直接会話できる方法に限って許されている。メールやFAXなど、一方的な連絡方法は認められていません。
電話点呼のメリットやデメリットです。
メリット
緊急時や遠隔地の運転手に対しても実施可能で、移動の手間を省ける。
特別な設備やシステムを必要とせず、手軽に実施できる。
デメリット
運転手の表情や体調を直接確認できず、運行管理者が正確に判断できないことがある。
通話内容を手動で記録する必要があり、後からの確認が煩雑になることがある。
電話が通じない場合、点呼が行えないことがある。
IT点呼
IT点呼とは、専用の機器、カメラまたはモニターなどを使用して点呼を遠隔で行う方法です。後述する自動点呼または遠隔点呼と混同されやすいですが、IT点呼は、導入するための条件があります。
まず、IT点呼を実施できる場所は、原則として、国土交通省の認定制度であるGマーク(安全に優れた運送事業所であることを示すマーク)を受けている事業者の営業所内または同一事業者の営業所間に限定されている。
次に、IT点呼の実施時間は、「1営業日のうち連続する16時間以内」に制限されている。つまり、IT点呼を始めたら、16時間連続してこれを行わなければならない。連続せずに、16時間を分けることは認められていません。
最後に、IT点呼の実施にあたり、国土交通省が認定した機器を導入・使用する必要がある。機器の一覧は、こちらをご覧ください。
2024年12月時点では、Gマークを受けていない営業所でも、以下の条件を満たしていればIT点呼を導入できますが、IT点呼が認められる範囲と時間帯が限られます(出典:IT点呼の概要|国土交通省)。
開設してから3年を経過していること
過去3年間自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと
過去3年間行政処分又は警告を受けていないこと。
IT点呼のメリットやデメリットです。
メリット
離れた場所にいる運転手とも、対面点呼のような安全対策をおこなえる。
質問項目や点検項目がデジタル化・標準化される。
記録が自動で保存され、後からの確認が容易になる。
デメリット
指定の機器で実施する必要があり、導入コストが高額になりやすい(1営業所あたり100万円前後)。
点呼をスムーズに行えるように、運転手向けの研修を実施する必要がある。
システムが故障したり、ネットワークが不安定になると、点呼を行えなくなることがある。
遠隔点呼
遠隔点呼とは、効率性向上を目的に実現した非対面式での点呼方法のことです。新型コロナウイルス感染症予防の施策として、対面で行われている点呼の非対面化を進めるために設けられた施策だと言えます。
実施する場所や営業時間などの要件を満たし、管轄の運輸支局の承認を受けると、遠隔点呼が認められます。
IT点呼と比べて、実施できる場所は似ていますが、両者の違いとして、Gマークがなくても遠隔点呼を導入できることが挙げられます。また、遠隔点呼は、100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社または100%子会社同士でも実施でき、事業規模が大きい企業におすすめの方法です。
一方で、遠隔点呼の導入にあたっては、国土交通省が定めた「遠隔点呼に使用する機器・システムが満たすべき要件 」、「遠隔点呼を実施する場所が満たすべき施設・環境要件」や「運用上の遵守事項」をすべて満たす必要があります。詳しくは、遠隔点呼の概要|国土交通省をご覧ください。
遠隔点呼のメリットやデメリットです。
メリット
IT点呼同様のメリット(手軽に実施できること、デジタル化しやすいこと、便利に記録できること)を持つ。
Gマークがなくても導入できる。
実施時間の制限がない。
デメリット
機器・システムの要件、施設・環境要件、そして運用上の遵守事項があるなど、導入の要件が多い。
システムが故障したり、ネットワークが不安定になると、点呼を行えなくなることがある。
自動点呼
自動点呼とは、2023年1月から開始された点呼方法で、業務後自動点呼実施要領に定められた要件を満たす機器(ロボット)を使用して、営業所または営業所の車庫において業務終了後におこなう点呼のことです。
IT点呼や遠隔点呼との一番の違いは、点呼業務の流れにおいて、乗務後にのみ自動点呼を実施できること。つまり、乗務前点呼で自動点呼は行えないということになっています。そのため、自動点呼を乗務後自動点呼と呼ぶこともある。
自動点呼に使える機器も、国土交通省認定のもののみ。機器の要件は以下の通りです。
アルコール検知器による測定の様子と結果を画像で記録保存できる。
運行状況といった運転手からの報告事項を電子的な方法で記録できる。
運行管理者側からの伝達事項をそれぞれの運転手に伝えることができる。
点呼の実施予定や結果を確認できる。
要件を満たした機器で自動点呼するため、運行管理者が立ち会う必要性はない。ただし、業務後自動点呼でアルコール検知といった異常を発見した場合、人間が対応する必要があるため、体制は整えておく必要があります。
完全にすべての点呼の自動化を図ると、運転手と運行管理者のコミュニケーションが減ったり、携行品のチェックができなかったりするため、ほかの点呼方法と組み合わせて実施している営業所が多い。
とはいえ、遠隔でも自動点呼できる、業務後自動点呼は有効な手段だと言えるでしょう。
自動点呼のメリットやデメリットです。
メリット
要件を満たした機器で自動点呼するため、運行管理者の工数削減につながる。
IT点呼や遠隔点呼と比べて、システム要件が緩く、導入コストを抑えることができる。
デメリット
異常があった場合に運行管理者が迅速に対応する体制を整える必要がある。
活用が定着するまで、運転手がシステムの使い方を習得する必要がある。
IT点呼、遠隔点呼や自動点呼の比較
ここまで、5種類の点呼の方法やそのメリット・デメリットを紹介しました。そのうち、対面点呼や電話点呼は比較的にわかりやすいと考えられますが、IT点呼、遠隔点呼や自動点呼の違いがよく分からない方は多いのではないでしょうか?
そこで、下図はこの3種の方法を比べてみたものになります。
点呼を適切に行わなかったときの罰則
ここまで、点呼の方法や流れをご紹介しました。点呼を怠ったり、点呼記録に不備がある場合など、点呼業務を適切に行わなかったときは、さまざまな罰則が科せられます。
例えば、貨物自動車の場合、点呼の実施違反(点呼が必要な回数100回に対して)は以下の通り。
点呼未実施19件以下:初回違反で警告、再違反で10日車両停止
点呼未実施20件以上49件以下:初回違反10日車両停止、再違反20日車両停止
未実施50件以上:初回違反20日車両停止、再違反40日車両停止
全ての点呼を実施していない:30日間の営業所停止
また、違反点数は、営業所に対して加算され、運輸局単位で累計します。累積期間は原則として3年です。
この3年の期間内に違反点数が累積すると、事業の許可取消しや事業の停止、違反事業者名の公表など、厳しい処分が科せられます。
また、点呼記録に不備があった場合も処分の対象となります。点呼記録の保管期限は1年間です。保存方法には決まりはなく、紙またはデータのいずれでも問題ありませんが、紛失やデータの改ざんなどの可能性も考慮すると、データ保存のほうが好ましいかもしれません。
乗務後点呼にLark自動点呼を使おう
安心・安全に運行するためには、適切な点呼が必要不可欠。
点呼方法は、対面点呼だけではなく、電話点呼やIT点呼、遠隔点呼、業務後自動点呼などもあるため、適切にルールを理解したうえで、効率的に記録できるツールを活用していきましょう。
特に、システムの導入コストが比較的に低く、実施場所や時間の制約が少ない自動点呼を、乗務後点呼業務に導入することで、点呼業務にかかる負担を軽減し、運行管理者の労働時間も削減できます。
下記は、2024年12月時点で、国土交通省が認定した自動点呼機器の一覧です。
認定済みの製品のうち、Lark 自動点呼(JG24-009)は、自動点呼や遠隔点呼、ライドシェア点呼、対面点呼などに対応した製品です。運転者は、免許証の確認、本人認証(顔認証)、アルコール濃度チェック、体温チェックの順に行い、点呼を完了すれば、点呼の結果が自動でクラウドで保存されます。もう紙での入力は必要ありません。さらに、スマートフォンの顔認証サービスを通じて、本人確認をおこなうため、正確に記録できます。
三和交通や山口第一交通、沖東交通グループ、株式会社未来都、互信ホールディングス株式会社など、多くの企業が導入済みです。便利でコストパフォーマンスの良い自動点呼機器をお探しの方はぜひご検討ください。
そのほか自動点呼以外にも、メッセージやメールなどの機能もあるため、イレギュラーなことが起こったときもスムーズに対応できるでしょう。また、用途別に複数のツールを購入・運用する費用や管理コストの大幅削減も期待できるでしょう。
少しでも「Lark 自動点呼」に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。