運行指示書とは、トラック輸送会社が2泊3日以上の運行をおこなう場合や貸切バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業が運行する場合に必要とされる書類のこと。
トラック輸送会社の場合、中間点呼が必要な際は、必ず作成することになりますが、その作成方法がよくわからない方もいるかもしれません。
そこで本記事では、運行指示書の内容や注意点、作成時のポイントなどについて解説します。運行指示書を作成するうえで便利なツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
運行指示書とは、2泊3日以上のトラック輸送をおこなう際に必要になる書類のこと。さらに、貸切バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業においてはすべて運行の際に必要になります。
運行予定日時や経由地、休憩地、休憩時間など、安全に運行するための計画が書かれており、運転者はその運行指示書に従って運転しなければいけません。
トラック輸送については、2003年の法改正に伴い、全国での輸送が認められるようになりました。しかし、それに伴い懸念されたのが、トラック輸送の安全性です。
そうした背景から、2泊3日以上の長距離トラック輸送に関しては、あらかじめ運行指示書を作成して安全性を確認したうえで、運転者を指導および監督することになりました。
運行指示書を適切に作成しなかったことが原因で、大きな交通事故も発生しています。それは、2016年に発生した軽井沢スキーバス転落事故のことです。
バス運転手に渡していた運行指示書には、出発地と到着地しか書かれておらず、本来なら必要な経由地や休憩地、休憩時間などの記載がありませんでした。このことが交通事故が発生したことにより、明るみに出て、大きな問題となりました。
さらに、運行指示書について調査すると、運行指示書を適切に作成していなかった会社が続々と見つかりました。このことは、非常に問題視されており、安全な運転のため、運転指示書の大切さを再認識するきっかけにもなっています。
運行指示書が必要なシーン
運行指示書は、乗務前の点呼と乗務後の点呼がともに対面でおこなうことができない場合に必要になります。具体的には以下のシーンが想定されます。
2泊3日以上(48時間以上)の運行があらかじめ決まっている
運転途中で2泊3日(48時間以上)の運行経路に変更となった
貸切バスのような旅客自動車運送事業
とりわけ運転途中で急に運行変更がおこなわれた場合、「時間がないから」という理由ですぐに目的地に向かわせたくなるかもしれませんが、それは違反です。
運行管理者は運行指示書を作成しなければいけません。ただし、おおまかな行先別のフォームを作成し、基準となる運行指示書がベースとしてあれば、それをコピーして運行指示書の正と副(正式のものと、その補助や控えとなるもの)を作成後、ドライバーに携行させるという対応でも問題ありません。
運行管理者が作成して運転者が携行する
運行指示書は、運行管理者が正と副を2部作成し、正本を運転者に携帯させて、副本を営業所で保管します。
そして、当初の運行計画に変更があった場合、「運行の開始地点と終了地点および日時」または「運行経路と主な経過地における発着の日時」を変更したら、運転者に電話などで指示し正本を変更し、運行管理者が副本に変更内容を記載します。
その後、運転者が営業所に帰ってきたら、運行指示書の正本と副本を突き合わせ、運転者記載の内容と営業所で保管していた内容に相違ないか確認した後、正本と副本を営業所に保管するという流れです。
運行指示書の内容とポイント
続いて、運行指示書の内容とポイントについて解説します。
記載すべき情報:7項目
運行指示書に記載すべき内容は7項目です。その7項目とは以下のことです。
運行の開始地点と終了地点および日時
運転者の氏名
運行経路と主な経過地における発着の日時
運行の際に注意する箇所の位置
運転者の休憩地点と休憩時間(休憩がある場合のみ)
運転者の運転または業務の交替がある場合は、その地点
そのほか安全確保のために必要な事項
なお、旅客自動車運送事業の場合は、記載すべき情報がさらに3項目増えます。
旅客が乗車する区間
睡眠に必要な施設の名称および位置
運送契約の相手方の氏名または名称
なお、もし1泊2日の運行予定や日帰りの運行予定が時間などの変更により出発も到着も対面点呼を受けることができなくなった場合、運行指示書を急遽作成することになります。
この場合、運転者は運行指示書を携行していません。そのため、運行管理者が運行指示書を作成し、運転者に電話などで指示した内容や日時、運行管理者の氏名を運行指示書の正と副に記入します。
運転者は乗務記録や日報に同様の内容を記入し、運行終了後に運行指示書の正と副とともに乗務日報をひとつにして保管します。
イレギュラーな対応にはなりますが、常に安全な運転をおこなえるような取り組みになっています。
保管期限:運行終了の日から1年間
運行指示書の保管期間は、運行終了の日から1年間です。
運転者のなかには、携帯した運行指示書の提出を失念する方もいますが、その場合も運行管理者がきちんと対応して、営業所に正と副を合わせて保管する必要があります。
運行指示書の注意点
続いて、運行指示書の注意点について解説します。ポイントは以下の2つです。
法律で定められている基準を守る
運行途中で変更があったら記録する
法律で定められている基準を守る
そもそも、労働者の働き方は労働基準法で定められており、運転者も例外ではありません。
運転者の拘束時間の上限はあらかじめ定められています。なお、拘束時間とは、労働時間と休息時間を合わせたものです。そして、休息時間とは、使用者の拘束を受けない期間のことで、業務終了時刻から次の始業時刻までの時間のことを指します。
長時間労働や過重労働を引き起こさないため、以下のように決められています。
1年間の拘束時間:原則3,300時間
1ヵ月の拘束時間:原則284時間、最大310時間
1日の拘束時間:原則13時間、最大15時間
1日の休息時間:継続11時間を基本とし、9時間が下限
この数値は、2024年4月から見直されています。
拘束時間だけでみても、1日あたり13時間以内と定められており、延長することもできますが、最大でも16時間まで。さらに、15時間を超えて延長できるのは、1週間のうち2日のみです。
なお、拘束時間の中の労働時間は、運転している時間や荷物の搬出および搬入時間を指すだけではありません。たとえば、渋滞に巻き込まれている時間や荷主の都合による待ち時間も労働時間に含まれます。
さらに、休息時間は10分以上でないと認められず、4時間の運転中は必ず30分以上の休息を取ることが義務づけられています。
これらを説明しただけでも、法律で定められた基準を守りつつ、運行指示書を作成するのは労力が要ることがわかるのではないでしょうか。
運行途中で変更があったら記録する
なお、前述で少し触れましたが、運行途中で変更があった場合は、運行管理者から指示された内容をもとに変更を加えることになります。
変更は、運転者が携帯する正本と、営業所に保管している副本、それぞれへの記載が必要です。正本と副本で整合性を保たなければいけません。
運行指示書の作成
続いて、運行指示書の作成について解説します。
決まった書式はない
そもそも運行指示書に決まった書式はありません。そのため、手書きで運用している方もいれば、Excelで運用している方もいるでしょう。
しかし、これまで説明してきた通り、運行指示書を作成するのは一苦労です。似た運行指示書を作成する場合は、過去の運行指示書をコピーして使用するといった効率性を考えると、ツールを使うのが理想的だと言えます。
なお、スケジュール表などを活用して、運行指示書を作成することも可能です。決められた書式がないからこそ、運転者や運行管理者にとって見やすいフォーマットをつくるとよいでしょう。
手書きではなくツールがおすすめ
運行指示書は、手書きではなくツールを使い、デジタル管理するのがおすすめです。
というのも、ペーパーレス化にすることで、書く手間や書類の整理を省略することができ、その分人件費をカットできるためです。
さらに、デジタル化した書類をクラウド管理することで、運転者や運行管理者以外の関係者もすぐに運行指示書を確認できるようになります。
アクセス権や編集権限を設定すれば、情報漏洩や書き換えのリスクを防げるでしょう。もし、手書きで運用していると、紛失や書き換えといった問題が発生してしまうかもしれません。
こういったことも考慮すると、ツールを使ってデジタル化する必要性が高いことがわかるでしょう。
Larkならドキュメントや自動点呼を活用できる
運行指示書を作成するうえで、ツールの活用は理想的だとお伝えしましたが、具体的にどのようなツールがよいのか、わからない方もいるかもしれません。
そんな方には、Larkのドキュメントや自動点呼などをおすすめします。なお、Larkとは、創造性と生産性向上のため、チャットやビデオ会議、文書の共同編集、メール、ワークフローなどを1つのプラットフォームに統合したツールを提供する会社のこと。
Larkのドキュメントとは
Larkのドキュメントとは、複数のメンバーがリアルタイムで編集できるオンライン文書作成ツールのこと。
特徴は以下の通りです。
複数のメンバーおよびデバイスによる編集ができる
インターネットに接続すれば編集内容は自動的にクラウドに保存される
@メンションを付けて特定のメンバーに通知することができる
コメントの投稿およびいいねをつけられる
画像やテーブル、動画、ファイル、ボード、ブロックマーカー、コードブロック、投票などのコンテンツを挿入可できる
TikTokやYouTube、Figmaなどのウェブページを埋め込むことができる
Markdownやショートカットキーを使用ができる
一通りドキュメントにあってほしい機能がそろっています。このドキュメントは、無料で利用できる「STARTER(スターター)プラン」でも利用可能です。具体的にドキュメントの使い方を知りたい方は下記リンクをクリックしてください。
Larkの自動点呼とは
Larkの自動点呼とは、国土交通省認定の業務後自動点呼認定機器(JG24-009)のこと。
点呼業務をスマートフォンでスムーズに実現できるように設計されています。自動点呼や遠隔点呼、ライドシェア点呼、対面点呼など、あらゆるニーズに応え、営業所および運転者の働き方を改善します。
点呼の結果は自動で記録され、クラウドで一元管理。もう紙での入力は必要ありません。Larkの自動点呼は、以下の通り4ステップです。
免許証の確認:Larkアプリに免許証をかざして、免許証情報を読み取る
本人確認:スマートフォンの顔認証サービスを通じて、本人確認をおこなう
アルコール濃度チェック:外部のアルコール濃度計検査装置をBluetoothでLarkの自動点呼と接続し、アルコール検査装置に息を吹き込む
体温入力:外部のデバイスで体温を測り、点呼システムに入力する
日々おこなう点呼だからこそ、円滑に進めましょう。このLarkの自動点呼について興味のある方は下記リンクをクリックしてください。
運行指示書に関する罰則
運行指示書に関する罰則は以下の通りです。
「日車」とは1日につき使用停止となる車両の単位のことです。たとえば、10日車の場合、トラック1台が10日間使用停止となります。
また、10日車につき1点の違反点数が付きます。違反点数の累積期間は基本的に3年です。
使用停止処分は、営業所で保有している車両台数に応じて使用停止となる車両台数が異なります。たとえば、車両を15台保有している営業所で20日車となった場合、トラック2台が10日間(20日をトラック2台で割った日数)使用停止になります。